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「特別の教科 道徳」の指導と評価の在り方 ~校内研修会から~

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先日、自分の勤務校で道徳の教科化に向けての研修会が行われました。

 

アンチ道徳の自分ではありますが、やらねばならぬことはきちんとやっていきたいと考えていますので、考えの整理のためにも内容を簡単にまとめておきたいと思います。

 1.道徳科学習の1単位時間の流れ

そもそも道徳科の学習はどのような流れで行われていくものなのでしょうか。

 

べつにこの通りの流れでやる必要は1mmもないですが、いわゆる「スタンダード」を知っておいて困ることはないと思います。

 

 

研修での説明をざっくりとまとめると以下の図のようになります。

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道徳科の学習においては、これまでとも同じではありますが、4つの段階に分けて学習を流していくことになります。

 

導入では、本時で取り扱う道徳的価値への方向付けを行うことを狙います。

 

よくあるのが、事前アンケートを用いるというものです。

 

前もって、取り扱う道徳的価値についてのアンケートを児童に対して行います。

 

その集計結果を紹介することで、ねらいとする価値への興味関心を高めることを狙います。

 

展開前段では、資料をもとに道徳的価値について理解を深めていきます。

 

いわゆる「中心発問」もここでされることとなります。

 

人物の心情などについて考えることでねらいとする価値へと近づいていきます。

 

展開後段では、展開前段での道徳的価値をもとに、自己の生き方について考えます。

 

最近の道徳ではここが非常に重要視されているようです。

 

教材を基にせまった道徳的価値について、教材内の他人事ではなく、自分のこととして、自分のかかわりで考えることで自己を見つめることになります。

 

また、これら展開の場面では、他の人の様々な考えを聞くことで、広い視野から多面的・多角的に考えることが大切になってきます。

 

終末では、道徳的価値のよさや難しさ(課題)をもち、今後の発展につないでいきます。

 

ここで大事なのは、自分がよくできていることだけではなく、自分が今できていない課題について考えてもよいということです。

 

これができている、あれができているだけではなく、「これができていないからもっとできるようになりたい」という思いをもつことも大切になります。

 

終末では、本時の道徳的価値に関する詩を読んだり、保護者からのメッセージを読んだりすることが多いかと思います。

 

 

2.道徳科の評価の対象はどこか

 

道徳科の評価は「個人内評価」といわれる評価を行います。

 

例えばクラスにAさん、Bさん、Cさんの3人がいたとします。

 

本時の道徳的価値に対する3人の思いは以下のような状況とします。

 

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そして授業後には、それぞれの道徳的価値に対する思いは以下のように変化しました。

 

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このとき、道徳科の評価ではどこを見るのでしょうか。

 

道徳科の評価においては、子どもたちの最終的な思い(♡)を評価としてみとることはしません。

 

どこをみとるかというと、子どもたちの学習状況(矢印)をみとります。

 

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3.どのように見取るのか

 

道徳科では、基本的に「1時間の道徳科の授業での学習の見取りを蓄積し大くくりの評価」をします。

 

ある1時間を例に見てみましょう。

 

道徳定番教材の一つに「ブランコ乗りとピエロ」という題材があります。

 

詳しい話の内容は以下のpdfをご覧ください。(pdfファイルがダウンロードされます。) 

http://cms.saga-ed.jp/hp/downloadAttachFile.do?ATTA_FILE_NM=201406180821051403047265882.pdf

 

簡単に言うと、「でしゃばりでいけすかないブランコ乗りがすごい頑張っていたので、これまで彼を嫌いだったピエロが見直した」みたいな話です。(大体あっているはず)

 

この学習を通しての見取りとしては以下のようなものができると思います。

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日々のこれらの蓄積によって評価を行っていきます。(できるかどうかは置いておいて)

 

そのように見取るときに大事なポイントとしては以下の2つがあります。

 

1つ目は「児童が一面的な見方から多面的・多角的な見方へと発展させているか」ということです。

 

例えば「友達と自分の考えとを比べながら考えているか」といったことが挙げられます。

 

2つ目は「児童が道徳的価値の理解を自分自身とのかかわりの中で深めているか」ということです。

 

例えば「自分だったらどうするかを考えているか」「自分にも同じ経験はなかったか考えているか」といったことが挙げられます。

 

では、それらの状況を毎時間の中で、どのような場面でみとることができるのでしょうか。

 

児童の書いたもので見取る方法が、時間がたっても見取ることができるものとして簡単です。

 

しかしこれには、書くことが苦手な児童の見取りが十分にできなかったり、逆に書くことが得意な児童を実際よりもよく見取ってしまうという問題もあります。

 

そのため、書いたもの以外にも「発言・話し合い場面」や「つぶやき・役割演技場面」での児童の様子も見取っていく必要があります。

 

そのほかにも、互見授業や学年、管理職等に授業を見てもらい記録をとってもらう「チームによる評価」、机間指導や授業後に「何か言いたいことはあるかな」「これについて、どう思うかな」などと個別に問いかけ、考え方や学習状況をつかむ「聞き取りやインタビュー」などの方法があります。

 

次に、見取る際の評価の視点について具体的にみていきます。

 

多面的・多角的な見方をしているかという評価の例としては、

 

・狙いとする道徳的価値の様々な面を考えている。

・道徳的価値を支える様々な根拠を考えている。

・様々な登場人物の立場で考えている。

・自分の考えと友達の考えを比べて考えている。

・時間の経過とともに変化する気持ちを考えている。

・人間の強さや弱さ等を捉えて考えている。

・とりえる行動を多面的・多角的に考えようとしている。

・自分と違う立場や感じ方、考え方を理解しようとしている。

 

といったことが考えられます。

 

自分自身とのかかわりの中で深めている評価の例としては、

 

・教材の登場人物に自分を置き換えて考えている。

・教材の問題点を自分事として受け止めて考えている。

・日常生活や学校生活等を想起しながら考えている。

・自分の生活を見つめ、振り返りながら考えている。

・自分だったらどうするかなどを考えている。

・現在の自分自身を振り返り、自らの行動や考えを見直していることがうかがえる。

・道徳的価値の実現することの難しさを自分のこととしてとらえ、考えようとしている。

・自分なりに具体的にイメージして理解しようとしている。

 

といったことが考えられます。

 

4.どのような記述をすればよいか

 

では、実際に記述するにあたって、どのような記述を行えばよいのでしょうか。

 

記述の仕方としては大きく「『学習状況』を中心とした評価」「『道徳性にかかわる成長の様子』の評価」の2つに分けられます。

 

「学習状況」を中心とした評価とは、学期に行った道徳の学習の中で、ねらいとする価値に対する学びの姿が顕著にみられた授業を中心に成長の様子を記述する方法です。

 

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例えばAさんの日々の学習状況として以下ような記録をしていたとします。

 

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これらの授業に注目して書くと、「道徳科では、友達の『身勝手と自由は違う』という友達の意見にうなずきながら自分の考えを書くなど、話し合いを通して自分の考えを深めるようになってきました」などの記述ができます。

 

「道徳性にかかわる成長の様子」の評価とは、年間や楽器を通しての学習活動で顕著にみられた成長の様子を記述する方法になります。

 

例えばBさんの日々の学習状況として以下ような記録をしていたとします。

 

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このような学期の様子をまとめて、「道徳科では、『自分はこんな時どうであったか』と自分を振り返る姿が増え、自分の考えを発言するようになってきました」といった記述が考えられます。

 

しかしこれら2つを比較してみたとき、後者の「道徳性にかかわる成長の様子」の評価のほうはやや具体性に欠けます。

 

できれば前者の「学習状況」を中心とした評価を行うほうが、具体的に児童の様子が見え、望ましいです。

 

 

長々と研修内容をまとめてきました。

 

実際問題これができるのかといったことは感じますが、「できる範囲でそこそこやります」というのが自分の基本的スタンスなので、無理なくやっていきたいと思います。

 

読んで気になったことなどがありましたらぜひ教えて下さい。